昭和のベースボールと言えば、どうしても長嶋茂雄ということになってしまう。民放が日本テレビしかなかった我が町では、ジャイアンツの野球しか存在しなかった。くわえて、昭和40年から続く巨人のV9は子どもには多大な影響力があった。そんな中で、長嶋のプレーは破天荒だった。チャンスにめっぽう強かった。長嶋はすべてを忘れてただ野球を楽しんでいた。
当時のテレビ中継は21時に終わっていた。だから、接戦で8回とか9回で中継が打ち切られると、わたしたちはラジオにかじりついた。そんな時に打つのが長嶋という選手だった。彼の心の中では、プロ野球の主人公は自分だと信じきっていたのだと思う。
窓から秋風が忍び込む夜に独りで庭を眺めていると、「長嶋打ちました、打ちました」というアナウンサーの声が今も聞こえてくるような錯覚に陥る。

